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今日も逍遥館 ~ 京都大学吉田南総合図書館のブログ ~

京大吉田南総合図書館にまつわる日々の話をスタッフが気の向くまま紹介するブログです

北京留学 –not語学留学, but 研究留学-

こんにちは!逍遥館です。

寒い日が続いていますが、皆さんいかがおすごしでしょうか。
「院生さんに聞く」シリーズ、久々の更新です。今回は人間・環境学研究科博士課程院生Nさんの海外研究生活について、ご紹介します。
Nさんはご自身の研究のため、2015年9月5日~2016年1月31日の半年間、中国の北京へ留学されました。実は彼女はこの2年前にも台湾に留学をされています。台湾留学の際は語学力強化も目的にされていたようでしたが、今回は研究を主目的とされていました。

では、早速お話をご紹介しましょう(ご所属はインタビューを行った2016年7月現在のものです)。

 

最初に、ご自身の研究テーマを教えてください。

「明清白話小説の日本における受容」です。

私は2年ほど前から水滸伝を中心に研究を行ってきていますが、この水滸伝には版本の種類がいくつかあって、江戸から明治時代に人々がどの版本を読んでいたのかを研究しています。

 

 

留学の目的(留学の最中にどのような勉強をされたか)を教えてください。

目的は大きく二つあります。一つ目は中国語のレベルアップのためです。私は以前台湾に1年間留学をし、そのときに語学も勉強して、日常会話は問題なく話せるようになりましたが、研究や学会の発表のときに、専門的な内容を中国語で説明することはとても難しいものです。そのためより高度で専門的な内容についても話せるようにならないといけないと思っていました。二つ目は、現地中国の図書館での版本調査のためです。

 

留学までの手続きについて

私は交換留学*1として留学をしました。

2014年6月には学内選考が終わり、内定していました。学内の選考が通った後は、北京大学からの許可を待つだけでした。2015年5月下旬ごろに入学許可証が送られてきて、そのときに宿舎の案内も受け取りました。

 

 

奨学金を受給されていたようですが。

中国政府と京都大学から奨学金をもらっていました。私のときは、2015年3月に書類提出(履歴書、志願書など)し、3月末に東京の日中友好医院で健康診断を受けて、4月初めに東京へ面接に行きました。面接合格の通知は4月末に届きました。正式な通知は8月に受け取りました。倍率はよくわかりませんが募集は110名だったようです。面接は中国語と日本語で行われ、面接官は中国政府の方と日本の文科省の方が併せて15名に対して、受験生が5名でした。面接時間は10分くらいで、「何故北京大学に行きたいか」「北京に来たら何をしたいか」などの質問がありました。

中国政府奨学金の説明*2に、「北京の大学は、留学生の数が非常に多く、合格しても希望の大学に配置されない可能性が高いため、希望大学を選択する際は北京以外の都市にある大学についても考慮すること」とあり、派遣先は中国政府側で決定されるため、自分の希望する大学に派遣されるとは限りません。ですので、北京に留学を考えていたとしても希望通りにならない場合もあります。ただ、私の場合は、京都大学と北京大学の交換留学生として合格し、受け入れ先が内定していたので、運良く中国政府奨学金を使って北京大学に留学できたのだと思います。健康診断は、これも説明に「すべての検査を、日中友好医院、同一の日本国内の病院、または同一の中国国内の国公立病院で受診すること」、「検査(診断書作成)費用として約2万円~3万5千円程度の費用がかかる」とあり、受診できる病院が限られているのと、お金がかかります。

 

 

留学先での一日のスケジュールは?

授業は曜日によって異なります。1週間に4科目8コマ(1コマ50分×2=100分)取っていました。月曜日は「版本目録学」、水曜日は「目録学」と「文献学」、金曜日は「版本学」という授業に出ていました。10数人程度のクラスで中国人ばかりでした。授業は講義形式で行われ、宿題は、ごくたまに小さい課題が出ました。例えば、版本学の授業の課題で、徐乾学(*3)について、蔵書を中心にまとめるといったものです。学期末には、版本に関連する書物を自由に選んで、それについて自分の意見をまとめるレポートを提出しました。授業のない日は学内にある自分の寮か図書館で勉強していました。
大学の時間割は、1コマ50分が12コマ(8:00~21:30)まであります。中国人の学生によると、学生は大学内の宿舎に住んでいて(例外もいると思いますが)、そこから教室に通えるため、夜の授業でもさほど大変ではないそうです。

 

北京大学では語学の授業はなかったのですか?

はい。北京大学に留学する際に、大学内にある語学学校に入るか、正規授業に出席するかの2択しかありませんでした。今回の留学の目的は、正規授業に出ることによって自分の研究を進めることも含んでいたので、後者を選びました。語学の授業に出られなかったのは本当に残念でした。これは完全に私のリサーチ不足です。留学前のこういった事前調査は大事だと思いました。やりたいことがきちんと決まっているなら、しっかり調べていくほうがいいですね。そうでないと、いざ現地に行ったときに自分のしたいことが十分できない可能性が出てきます。正規授業に出ることで、固有名詞や専門用語を聞き取る力は養えますが、中国語の表現力は、語学の授業に出ないとなかなか勉強する機会がありません。

 

授業がない日や時間は何をしていましたか?

北京大学図書館か中国国家図書館へ行って、古典籍やマイクロを見ていました。他に、国家博物館図書館、清華大学図書館、天津図書館、上海図書館などに行きました。南京図書館で原本を閲覧することは大変困難だそうなので、そこで本を見られたことは幸運だったと思っています。

 

留学中に学会も行かれたそうですね。

中国で参加した学会は、中国古代小説戯曲文献及数字化国際研討会です。この学会で知り合った先生方のおかげで、中国の図書館で本をたくさん閲覧できる機会に恵まれました。

 

留学中の滞在先はどんなところでしたか?

通常、留学生は、1か月3,500元(約70,000円)くらいの家賃の宿舎に入るようでしたが、数に限りがあるため、私は部屋を取れませんでした。私の住んでいた宿舎は、1か月で7,200元(約15,0000円)と他の宿舎と比べても高額でしたが、どうやら特別な寮だったようで、外国の著名な先生の門下生などが入居していたと話に聞いたことがありました。半年程度の短期の留学だと、学校の外でワンルームを借りるのは非常に困難です。また中国は2人以上で一緒に住む習慣があるため、ワンルームを探すのはなかなか大変だと思うので、学内の宿舎にいるほうが安全で便利だと思います。

 

 

北京での生活について

物価はとても高いです。ユニクロのフリースの上下が250元くらい(約5,000円)していました。ただ、交通費は非常に安いです。北京大学から天安門までは地下鉄で40分ほどかかりますが、片道5元(約100円)です。地下鉄はボディチェックがあり、いつも長蛇の列になっていました。

また、高鉄という新幹線のような乗り物もあり、天津、南京、上海に出かけました。北京からの所要時間は、天津が約35分、南京が約4時間半、上海が約5時間半かかります。目的は天津図書館、南京図書館、上海図書館で古典籍の閲覧をすることです。時間に余裕がなかったので、観光はほとんどできませんでした。

留学中の食事については、自炊する場所が寮内になかったため、外食のみの生活でした。

 

 

帰国後の現在はどのようなことをされていますか?

中国で語学の学習ができなかったので、戻ってから京大で「中文學術文寫作1」という中国語の作文の授業を受けています。また、先ほど言いました国際学会が今年(2016年)の9月に開催されますので、今度は私も口頭発表ができるように現在準備中です。

 

 語学留学と研究目的の留学の違いは何だと思いますか?

中国に留学する場合で言うと、語学留学は単に中国語が話せるようになるための留学です。研究目的の留学は、単に中国語が流暢に話せるだけでなく、中国語の文献を正確に読み、文語文で文章を書き、専門的な内容を話し伝える、という能力が求められます。話せることができたとしても、専門用語を知らなければ、研究ができません。自分の研究を中国語で進めることが研究留学だと思います。

私は以前、台湾に留学していますが、その時は初めての留学でしたし、現地に友達もいて、今よりももっと、「留学しに行く」という感覚が強かったのですが、今回は留学というより、専門的な知識を身につけに行ったという感覚のほうが強かったです。

 

 

中国へ留学をする人へのアドバイスをお願いします。

命にかかわるようなことはめったに起こらないと思いますが、盗難はよくあります。本当にどこでも盗まれます。大学内の食堂などで携帯を机の上に置いているだけで盗られます。ですので、貴重品は必ず肌身離さず持っておくほうがいいと思います。

 それから、設備の不具合は起こりうることだと思っていたほうがいいです。寮にいたときは、水漏れ、水が出ない、お湯しか出ない、電気がとまる(夜なのに電気がつかない、エアコンがつかない)など、しょっちゅうありました。一応寮内に受付がありますが、対応に時間がかかったり、「後で業者を呼ぶ」と言っておいて一向に来なかったりします。そうなると修理に来てくれるまでひたすら待つか、もしくは部屋自体を変わることはできないので、別の階や棟の共用部分を利用するなどして対応するしかありません。幸い、私はそこまでするには至りませんでしたが、水道から熱湯しか出なかったときが一番大変でした。

 

 

最後に留学を終えた感想をお願いします。

正規授業を受けていたおかげで、専門用語を耳で聞いてすぐ理解できるようになりました。中国での授業は日本ではないものでしたので、とても面白かったです。日本にいるときに本で読んで知っていた言葉や表現が、中国語でどう表現されているのかを勉強できたことは本当に新鮮でためになりました。

 

ありがとうございました。 

 

*1:京都大学が海外の大学と締結している大学間・部局間の学生交流協定に基づく留学。留学先での授業料は免除され、留学先での在学期間も京都大学における修業年限に通算されるので、留年せずに所定修業年限内で卒業することが可能な制度。

*2:「中国政府奨学金」8.) 注意事項より(2016/09/26 確認)

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