こんにちは、逍遥館です。
第7回グレート・ブックス読書会は、7月7日の七夕に開催しました。
7がゾロゾロ並んでいますが、意図した訳じゃないんです、偶然なんです。
今回はカント。大物ですね。
グレート・ブックスコーナーにある『純粋理性批判』は7巻組。しかも哲学書。
そんな著作を90分の読書会で取り上げようなんて、かなり無謀な試みではないでしょうか?
さらに 「『純粋理性批判』はグレートブックか?」という問いまで立っています。
「名前だけは知っているけれど、どんなことを書いた人なの?」「ひとりで読もうとすると挫折しそうだから、先にポイントをおさえておきたい」そんな参加者がたくさん来られるのではないかと予想していました。
参加者総勢25名(図書館スタッフ込)。
なんと、京都大学新聞の方も取材に来られました。(京都大学新聞8月1日号に掲載☆)
日本に250人くらいおられるというカント研究者の一人、渡邉浩一さんが今回のコーディネーターです。
最初に「なぜカントに興味を持ったのですか?」と渡邉さんが参加者に質問します。
「ミーハー的関心から」「いろいろな逸話がある変わった人だから」「有名人だし」「他の著作にたくさん引用されているから」「文化の香りがする」…などなど。
しかし、『純粋理性批判』を読破された参加者は、ほんの数名…。
私も読めませんでした。1ページ読むのにめちゃくちゃ時間かかりますもん。
こんなに難しく書かなくても、もっと伝えやすい書き方があると思うのですが…。
原典にあたるのは基本中の基本ですが、カントについては個人的には入門書をお勧めしたいと思うほどです。
まあそこはそれ、当館の読書会は”入門”読書会ですから!
コーディネーターの渡邉さんが、内容をかみ砕いて説明してくださるはず!!!?
まずは、「グレートブックス」について。
グレートブックスとは、もともとR.M.ハッチンス(シカゴ大学元総長)らが選んだ、西洋文明を象徴する主要な古典群のことです。
詳しくは、以下の図書を参照ください。巻末にグレートブックスリストもついてます。
『偉大なる会話』R.M. ハッチンズ著 ; 田中久子訳. -- 岩波書店, 1956.8
アメリカでは、実際にグレートブックスをカリキュラムに取り入れている大学があり、本気度が高いSt. John's Collegeとゆるく取り入れているBrown Universityが対比され、紹介されました。
本題、『純粋理性批判』について。
配られたレジュメには、主に序文の一部が引用されています。『純粋理性批判』のエッセンスが詰まっているのは序文ってことなのか、と思っていると、渡邉さんが参加者を指名してレジュメを読ませ始めました。スタッフには当てないよね、と思いつつドキドキ。
「形而上学」「アプリオリな観念」「アンチノミー」…耳慣れない言葉がでてきます。形而上学(Metaphysics)とは、"形を超えたもの、例えば「魂(心)とはどんな性質のものか?」「神は存在するか?」「世界の始まりは?」のような問いを立てる学問"。アプリオリとは"経験的認識に先立っていて、先天的・自明的な認識や観念"。アンチノミーとは、"二律背反、正命題と反命題が、両方とも証明できない又は両方とも証明できてしまう状態"。
空間という観念についてカントが考えたことを中心にレジュメがまとめられているようです。理性、認識、経験、観念、直観、、、カントの使う言葉の定義が良く分からず、うー、となります。
カントのコペルニクス的転回と言われる箇所はここ。
「われわれの認識はすべて対象に従わなければならないと考えてきた。しかし...(中略)...対象の方がわれわれの認識に従わなければならないと想定すれば、われわれは形而上学の課題をもっとうまく解決できないであろうか。」(第二版序文より引用*1)
コペルニクスが、天空が動いているんじゃなくて地球が動いているんじゃないのか?と考えたのと同じです。
その結果、カントの考えでは「世界は空間に関して、無限か、有限か?」という形而上学的問いには「答えられない」ということが答えられるのです。
読書会後のアンケートには、たくさんの、しかも長い感想やご意見が寄せられ、書ききれませんので、一部のみご紹介します。
・あまり理解できた訳ではないが、読んでみようというモチベーションにはつながった。
・ 難解な内容をわかりやすい言葉で解説されていて素晴らしいと思います。「グレートブックか?」という問いの立て方も興味深く思いました。
・カントを読みかじっただけでは理解できなかった話が、解説者や参加者の発言から少し解きほぐすことができた。読書会は初めてだったけれど、読書会というものの意義を感じられた。
・カントなんてむつかしい!と思っていましたが、たくさんの人が参加していて、みんな熱心ですばらしい会だと思いました。もっと話を聞きたいと思いました。ありがとうございます!
また、「『純粋理性批判』はグレートブックか?(教養として読むべき本なのか?)」という問いは参加者にゆだねられ、問いは開かれたまま終わりました。
こういう終わり方って、哲学らしくていいですよ、ね?
(A)
*1:渡邉さんが使用されたテキストはこちら:『純粋理性批判』イマヌエル・カント著 ; 石川文康訳 ; 上, 下. -- 筑摩書房, 2014